子供たちの「リンカーンの伝記」は間違っています(その6)

題:子供たちの「リンカーンの伝記」は間違っています
       (その6)
[ 関連事項 ]
(8)・綿花という新しい商品作物を得て、プランテーション
経営者=奴隷所有者(白人キリスト教徒)は、安い労働力を欲
し、黒人奴隷制度を強化しようと懸命だった。
 キリスト教の教義から黒人の奴隷としての使役に何ら罪悪感
は持っていなかった。
 この黒人奴隷制度を脅(おびや)かすものは、少数だが「自
由黒人の存在」だった。
 黒人奴隷は、自由黒人になりたいとした。
 自由黒人は「軍役に服して自由の身」になったり、「勤勉に
貯え、主人から自由を購入」したり、「逃亡によって自由」を
得たりしていた。
 この黒人奴隷制崩壊を孕(はら)んだ「自由黒人の存在」を、
白人たちは煙たく思っていた。
 ここに、「自由黒人をアフリカに送還してしまおう」という
考えが生まれ、キリスト教聖職者のロバート・フィンガーが提
唱した。
 この提唱により「アメリカ植民協会」が結成された。
 この事の本質は「白人社会の中で、黒人は、白人と一緒に生
活することは出来ない」という白人優越=黒人蔑視の人種的偏
見であった。
 そして、黒人を「隔離」し「追放」することだった。
 話は、「植民」とか、「解放」とかの言葉によって美しそう
に脚色されていたが、実態は「放逐」だった。
 これは、キリスト教がよくやるプロパガンダ(嘘宣伝行為)
だった。
 そして、アフリカ象牙海岸近くに4万平方キロメートルの地
が確保され、用意された。
 そして、計画は実行に移された。
 首都は、アメリカ大統領のジェームズ・モンローの名前から
「モンロヴィア」と名付けられた。
 これが、こんにちのリベリア共和国である。
 エイブラハム・リンカーン大統領も真剣に、非人道的なこの
「黒人隔離」を考えた。
 また、リンカーン大統領は「黒人の軍隊編入をためらった大
統領」だった。
 しかし、ここで正しく歴史を認識するために記す必要がある
ことは、黒人の黒人解放戦士フレデリック・ダグラスの働きに
より「黒人の軍隊編入が陽の目をみた」。
 戦争における黒人の方達の働きは素晴らしかった。
 この黒人のダグラスの功績も、白人社会の歴史は「忘却の彼
方へ埋没させようとしていた」。
 最近になって、長年、埋没され、歪(ゆが)められてきた黒
人の方たちの過去の歴史を発掘し、正しく再発見しようという
努力の結果なのである。
 黒人が、どれ程、偉大なことをなし遂げようと、抹殺される
社会にアメリカがあることを、この事は示している。
 「黒人の行為・功績を正しく記録する社会システムではない、
その歴史もない社会」なのである。
(9)・奴隷州と呼ぶべきアメリカ南部地域は、奴隷制を守ろ
うと残忍なまでの弾圧と必死の防備策を取った。
 南部は「武装した奴隷収容所」と呼ばれた。
 逃亡した奴隷を取り戻すため「逃亡奴隷取締法」を制定した。
 獰猛な犬どもと銃口の追跡を受けて、逃亡に失敗し捕えられ
た奴隷は二度と同じ罪を犯す事がないよう、また、他の奴隷へ
の見せしめのために、数十回も激しく鞭打たれたうえ焼印を押
されたり、耳を削(そ)がれたりされた。
 なんとか逃亡に成功した奴隷の首には、賞金がかけられ、生
かすも殺すも、これを捕えた者の裁量にまかされた。逃亡奴隷
取締法とは、このような残虐行為を法によって承認したものだ
った。
(10)・あるアメリカの黒人(奴隷)の述懐「・・・反対に、
もしも、我々(黒人)が、かれら(白人とくに奴隷所有者)を
奴隷にして残忍な奴隷制度の中に縛り付ける様な事をしたとし
たら、かれらは、いったい、どんな気がするだろうか?・・・
私は、君たちにたずねたい。君たちの母親や妻や幼い子どもの
生命を奪う暴君の奴隷となるくらいなら、君たちは、むしろ殺
される事を望むのではないか?・・・信じ給え、君たちを殺そ
うとするような、そんな人間を君たちが殺すのは、喉が渇いた
時に一杯の水を飲むのと同じくらい当然のことではないか」と。
 これは奴隷所有者に大きな衝撃を与えた。