日本を救う、救いたい (その1) ・・・大学教授の言葉・・・

題:日本を救う、救いたい(その1)・・・大学教授の言葉・・・ 

 岩田規久男氏(学習院大学教授)の言葉:
 「経済界は、
 政府に成長戦略を求めているが、
 デフレと超円高のままでは、
 どんな成長戦略を取ってもその成果は望めない」・・と、先生は
言われる。
 素晴らしい言葉が続く。
 今(2012・6・14)も超円高ですが
 (米ドル79.38、ユーロ99.72)、
 一度は読んでいただきたい本です。
 本:「デフレと超円高」(講談社現代新書)。

 著者略歴:
 1942年、大阪府に生まれる。1966年、東京大学経済学部卒、
 1973年、同大学大学院博士課程修了。1998年、学習院大学経済
 大学教授。この間1976年〜1978年までカリフォルニア大学バー
 クレー校において客員研究員を務める。専門は金融・都市経済学。

 (内容抜粋):
 2010年の日本経済は、
 急速な超円高に振り回された1年であった。
 2010年12月30日の円ドルレートの終値は81円50銭で、
 年初(2010年1月4日)よりも14%の円高・ドル安だった。
 2008年9月半ばのリーマン・ショック以降の世界同時不況化で見
ると、
 円の対外相場の急騰は猛烈を極めている。
 すなわち、ドル、ポンド、ユーロ、元、ウォンに対して、
 それぞれ、32%(2010年12月30日終値の2008年9月12日比)、
 51%(2010年12月29日終値の2008年9月12日比。以下同じ)、
 41%、27%、35%もの円高である。
 円は、
 資源国で世界同時不況からいち早く立ち直った高金利通貨国(長
国債金利は5%台)のオーストラリア・ドルに対してさえも、
 世界同時不況下で5%の円高である。
 実質実行為替相場で見ると、
 円はリーマン・ショック後、
 2010年末までに26.5%も上昇しており、
 その通貨高は突出している。
 この様に、
 デフレに加えて、
 円がどの通貨に対しても軒並み高騰したままでは、
 政府がどんな成長戦略をとろうとも、
 日本経済が安定した成長を達成し、
 それを維持することは不可能である。

 一部には、
 こうした超円高を歓迎すべきであると捉える向きがあるが、
 超円高は、
 日本経済の強さの結果生じたものではなく、
 単に、
 世界中で日本だけがデフレであるために生じているに過ぎない。
 超円高を歓迎する人は、
 日本だけがデフレであることを歓迎しているのである。
 超円高でも、
 2010年9月頃までは、
 日本経済は何とか持ちこたえて来た。
 それは、
 世界同時不況下でいち早く立ち直った新興国経済への輸出が好調
だったことと、
 エコカー補助金・減税と家電エコ・ポイント制が、
 消費の大幅増をもたらしたからである。
 しかし、
 エコカー補助金が2010年9月初めに終了すると、
 10月と11月の乗用車新車販売台数は前年同月比で、
 それぞれ、29%減、34%減となった。
 家電エコ・ポイント制は、
 2011年3月末まで延長されたが、
 予算がなくなれば、その前でも打ち切りになる。
 一方、
 中国などの新興国は、
 インフレ警戒に入っており、
 金融引き締め政策への転換により、
 今後、その成長は鈍化する可能性がある。
 ギリシャアイルランドなど、
 財政危機を抱えたヨーロッパ経済にも暗雲が垂れ込めている。

 以上の様に、
 これまで日本経済を支えて来た二つの要因が、
 剥落するにつれて、
 今後、
 デフレと超円高の大きな負の効果が本格化すると懸念される。
 デフレと超円高は何よりも雇用を直撃する。
 失業率は、5%台で高止まりしているが、
 失業率がこの程度で止まっているのは、
 企業内が国から雇用調整助成金の支給を受けて、
 必死に正社員の雇用を守っているからである。
 企業内の潜在的失業者は、
 528万人から607万人にも達すると推計されている(2009年度年
次経済政報告による)。
 これは、
 雇用者の10%から12%は
 実質的には失業者であることを意味する。
 したがって、
 企業内潜在的失業者を加えた実質的な失業率は、
 13%から14%にも達することになる。
 さらに、
 雇用は失業率だけでは測れないほど悪化している。
 リーマン・ショック以降、
 正社員は減少し続け、
 増えるのは賃金が低く、
 雇用の不安定な非正社員ばかりで、
 雇用者に占める非正社員は、
 35%(2010年7〜9月期。以下同じ)にも達する。
 男性非正社員のうち36%は、
 これからの日本経済を担うべき15歳から34歳の若年層である。
 失業期間は長期化し、
 失業者336万人のうち38%の人は、
 1年以上も失業している。
 デフレが始まって以降、実質賃金も低下した。
 2009年上期と2010年上期の実質賃金(5人以上の事業所)は、
 デフレが始まる前の1997年上期よりも、
 それぞれ、7%と6%の低下である。
 2010年上期の実質賃金は、
 17年も前の1993年と同じ水準でしかない。
 超円高は、
 製造業の海外流出を促進するが、
 いまや、内需型産業と思われていたサービス産業も、
 デフレと超円高内需が増えないため、
 海外企業を買収して、
 海外事業展開を進め始めた。      (つづく)