日本を救う、救いたい (その2) ・・・大学教授の言葉・・・

題:日本を救う、救いたい(その2)・・・大学教授の言葉・・・ 
         岩田規久男氏(学習院大学教授)の言葉

 こうした企業行動により、
 雇用はますます減少し、
 増えるのは非正社員雇用ばかりになってしまう。

 日本は少子・高齢化が急速に進み、
 生産年齢人口が減少する時代に入った。
 そうであれば、
 本来、
 労働市場は人手不足で、
 「売り手市場」になるはずである。

 ところが、
 実際に起きているのは、
 就職氷河期に象徴される「買い手市場」で、
 大量の就職浪人の発生である。

 いったい、
 どうしてこんな馬鹿げたことがおきるのであろうか。
 たまたま、
 高校や大学を卒業した時が不景気のために、
 正社員になれなかった人の多くは、
 セカンド・チャンスがほとんどないため、
 一生、
 非正社員として働かなければならない。
 正社員と非正社員の生涯所得には
 約2.5倍もの格差がつく
             (2009年年次経済政報告による)。
 以上の様な雇用状況では、
 多くの人が将来不安から、
 財布のひもを締めて、
 支出を控える。
 その支出の抑制がデフレを促進する。
 特に、
 若い人には希望がなく、
 かれらが内向きになるのも当然である。
 菅直人首相は
 「一に雇用、ニに雇用、三に雇用」といって首相になった。
 しかし、
 政府には雇用を増やす手段はほとんどない。
 なぜならば、
 雇用が悪化しているのは、
 デフレと超円高のためだからである。
 そして、
 超円高の原因はデフレである。
 政府にできる事は、
 税金を使って、
 デフレと超円高で悪化する雇用の痛みを和らげることぐらいしか
ない。

 経済界は、
 政府に成長戦略を求めているが、
 デフレと超円高のままでは、
 どんな成長戦略をとってもその成果は望めない。

 それは、
 成長戦略とは、
 規制緩和などによって
 供給能力を増強する政策だからである。

 日本経済はデフレと超円高で、
 大幅な需要不足である。
 需要が大幅に不足している時に、
 供給増強政策をとれば、
 ますます、
 需要が供給に対して不足するようになり、
 雇用が悪化するだけである。

 成長戦略が成果を上げるためには、
 まず、
 デフレを止めなければならない。

 デフレを止めれば、円高も止まる。

 デフレと超円高を止める事が出来る唯一の機関は、
 政府ではなく、
 日本銀行である。

 これを逆に言えば、
 デフレと超円高をもたらしている真犯人は、
 日銀だという事である。

 本来、
 政府が日銀の政策目標を決め、
 その目標達成を日銀に義務付けなければならない。
 つまり、
 本来、
 日銀には金融政策の目標を決定する自由はなく、
 あるのは、
 目標を達成するための手段を選ぶ自由である。
 これが、
 政府からの日銀の独立の本来の意味である。
 すなわち、
 右の意味で、
 日銀は政府の子会社であり、
 親会社の政府の目的に従わなければ、
 国家経営は成り立たないのである。

 ところが、
 1998年から施行された「新日銀法」は
 日銀に目的達成の手段だけでなく、
 政策目標の決定についても政府からの独立を認めてしまった。
 その為、
 それ以後、
 日銀は何らの責任も取ることなく、
 「いいたい放題、やりたい放題」の独善的機関になってしまい、
 子会社の日銀が
 多少とも「デフレ脱却」のポーズをとると、
 親会社の社長や取締役が「ご協力いただいて、感謝します」とい
う始末である。
 親会社が子会社をコントロールできない会社が
 まともな経営をできるはずがない。
 小泉純一郎内閣も
 「デフレ脱却」を掲げたが、
 日銀に対しては何も注文しなかった。
 それが「政府からの日銀の独立」であると勘違いしていたからで
ある。
 そのため、
 小泉元首相はデフレ脱却を果たすことなく、
 郵政民営化の目途をつけるとさっさと政権を降りてしまった。
 小泉元首相に
 デフレ脱却の意図はまったくなく、
 あったのは郵政民営化だけだったのである。
 国民も新聞などのメディアも
 政府や首相をとっかえ、ひっかえしても、
 何も変わらないこと、
 攻めるべき本丸は「日銀にある」ことに気が付くべきである。

 金融政策は分かりにくいといって敬遠するのではなく、
 金融政策こそが、
 雇用をはじめとする、
 私たちの生活の良し悪しを決定する政策であることを
 理解しなければならない。

 この本は、
 日銀の金融政策をどのように変えれば、
 デフレと超円高から脱却して、
 雇用も、財政も、年金も
 大きく改善できるかを明らかにしようとするものである。
 とくに、
 本書で強調していることは、
 デフレ下の金融政策とは、
 人々の間におだやかなインフレ予想の形成を促すことによって、
 デフレと超円高から脱却する政策である、
 という点である。    (つづく)