「笹子トンネル崩落事故」について

題:「笹子トンネル崩落事故」について 
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 不幸な事故が起きました。
 2012・12・4のNHKのニュースを見ていて「おやっ?」と
思ったことがありました。
 ニュースは、崩落した所の図面を見せていましたが、肝心の
ボルトのところが「ホールインアンカー」と言われるボルトの
図でした。
 これが事実であるなら、気になることがあります。
 「ホール・イン・アンカー」という様に、トンネルのコンク
リートが硬化した後に、ドリルで穴をあけて、ボルトを差し込
むという、後からボルトを設置するやり方の図面でした。
 ドリルで穴をあけてから、差し込むボルトの頭を叩くと差し
込んだ部分が広がって、その穴のコンクリート壁との摩擦でア
ンカーボルトがセットされる方式です。
 または、ボルトを差し込んで樹脂で固める方式もあります。
 いずれの方法においても、ドリルで穴をあけるため、深さは
浅くなります。
 その浅い穴の局所で力を支える、受けることになります。
 弱点は、長期間においてその局所の力の維持が保てるか、維
持できるかの問題です。
 樹脂でボルトを固着するタイプは、樹脂が確実にコンクリー
ト壁に付着するように、ドリルで穴をあけた時に生じたホコリ
などを完全に取ることです。このホコリ・粉塵をしっかり取り
除くことが出来るかです。
 しかし、完全に取ることは不可能なので、その様な状況の中
で樹脂のコンクリートへの付着に期待します。
 また、摩擦での接着するタイプも樹脂の付着による接着タイ
プも振動に弱いことです。
 長い期間、振動がボルトに伝わると摩擦でコンクリート壁を
押し付けている肝心の箇所がゆるまるのが心配です。確実に振
動があればゆるくなってきます。
 樹脂も少し残っただろうホコリの層との間(界面)で剥離が
少しづつ生じて来ることが心配です。
 自動車の走行の振動(上下動など、特に大型トラックなどの
大きな振動など)が天井板に振動が伝えられ、天井板を動か
し、天井板を支えている鉄骨を動かします。
 そして、その振動は、鉄骨はボルトへ振動を伝えます。
 この様な状況が長期間、常時、続いている訳です。
 この様な中でホールインアンカーがあることは最悪の状況で
す。
 また、大型トラックが与えた走行路盤の振動が床から壁へ伝
わり、直接トラックなどの走行振動がホルーンアンカーのボル
ト部分に振動を伝えることもあるでしょう。
 トンネル内は、常時、振動をしている環境となっています。
すべてが振動しています。
 また、地震動などが天井板を揺らし、その動きがボルトに伝
わることもあるし、経時において、いろいろな振動がこのボル
トに伝わります。
 摩擦力はその都度、少しづつ低下をしていきます。
 この様な笹子トンネルの様な場合、大切な施設の部分は、特
に振動のある部分はホールインアンカーの後やり工法は避け、
しっかりしたアンカーを、事前に打ち込む工法、コンクリート
の中に「足の長いアンカー」を埋め込んで戴きたかったと思い
ます。
 つまり、コンクリートが固まるとともに堅固にセットされる
「長い定着部分を持ったアンカー」がセットされる設計として
戴きたかったと感じます。
 ホールインアンカーは安易な工法の設計であったと感じま
す。
 施工性は良いのですが、また、振動のない静的な環境の所に
使用して戴きたい工法なのです。
 それにしても、ホールインアンカーは、コンクリートへの打
ち込みのアンカーに比し、長期の耐力には劣ります。
 コンクリートへの打ち込み型のアンカーのやり方は色々あり
ます。
 1.2トン/枚の重い天井板で設計するのなら、ホールインア
ンカーの設計は安易だったと感じます。
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追伸:車の走行による風圧の変化で天井板の上下動も生じま
す。
 特に大型の車の風圧の変化は大きいと思います。
 この風圧の変化で、常に、天井板には上下振動が生じます。
 この振動も、アンカーボルトへの経時劣化による耐力減少へ
の影響を与えると感じられます。
 また、テレビで見た限りなのですが、1.2メートルピッチで
天井板を支える鉄骨があると報道されて居ります。
 そして、その1本の鉄骨当たり2本のボルトで留められてい
る様にテレビの図面では示しています。
 直感ですが、少ないという感じがいたします。
 2本であるなら、1本が駄目になったら非常に大きなリスク
が生じることになります。(50%という大きなの耐力減少)
 0.6メートル当たり1本のボルトとなりますが、重い天井板
の割にピッチが広い感じ(ボルトが少ない感じ)がします。
 安全係数的な言い方をすれば、ぎりぎり的な感じがしてしま
います。
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追伸の追伸:
 テレビの報道において、事故を危うく免れた方の話におい
て、「津波の様に(片方の方から)天井が落ちて来ました」と
いう話がありました。
 これは、一か所の崩落を隣の箇所が支えきれなくて(その分
をカバーして支えることできなくて)崩落をし、そしてまた、
自分の崩落が、その隣の部分の崩落を誘発するという状況で
す。
 これは、明らかに安全係数がぎりぎりの状況を表していま
す。
 余力が足りないのです。
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☆(2012・12・5)のTBSテレビ、pm13:20頃、番組名:
ひるおび!」を見た。
 東京大学・藤野陽三教授が出演していた。
 やはりホールインアンカーの樹脂注入タイプ(ケミカルアン
カーと称している)であった。
 ドリル削穴の深さは13cmのようだ。
 そのボルトが1か所に2本使用されている様だ。
 そして、番組では検査方法について必死に解説し放送してい
た。
 打音検査が良いなどと。
 また、2000年に打音検査をしたが、その後、組織の変更な
どの事からか打音検査はしなくなったと報じていた。
 検査の効率などがあったのか?・・・など、検査についての
話題に集中していた。
私見
 検査方法は、打音がしっかり定着してないボルトの発見には
良いが、今回のこの部分は、一か所に2本のボルトしか使われ
ていない。
 定着の悪いボルトが発見された場合、耐力が50%減とな
る。(4本とか多数なら25%減とか復旧のすべがある)
 致命的なダメージとなるのである。直ぐ問題が起きる大きな
ダメージなのである。
 今は、悪いボルトの発見ではなく。緊急に補強工事をすべき
である。
 今回の事故でも、1か所の崩落が、その箇所のみの崩落で留
められなくて、130メートルもの大きな範囲を次々と誘発して
崩落した余力の少ない設計となっているわけで、もう、緊急補
強工事をすぐすべきものと思う(もしかすると、緊急の検査の
ため、大勢の方たちが、今、天井の上に登っていますが、天井
板崩落の事故にならないとも限らない余力のなさを感じる状態
です)。
 工法は、コンクリートがすでに打設され、コンクリートも硬
化してしまった状態なので、やむを得ず、後打ち工法のホール
インアンカーの工法になるが、今ある中央の鉄骨の支えの他
に、その中央の鉄骨の支えと壁との中間にもう1列の支えの鉄
骨を補強する工事をすべきである。
 左右2列の増設補強である。
 トンネル天井板を3列で支えるのである。
 検査で、ボルトの機能しないボルトを発見した場合でも、そ
のボルトを撤去しても余力があるので、安全に復旧工事もでき
る。
 今回、このテレビの報道から得た情報から判断すると、樹脂
とコンクリートの境界の界面で剥離し、耐力が無くなったと考
えられる。
 そして、ボルトが天井板を支えられなくなったと感じられ
る。
 今、古い公共物を全部撤去して、新設し直す工事をすること
に集中しているが(ゼネコンは喜ぶが)、その新設する膨大な
資金をメンテナンス、及び、補強工事に徹底的につぎ込むべき
である。
 ものを大切に長く使うようにすべきである。