武力によらないで 広まった宗教 (その1)

 題 : 武力によらないで 広まった宗教(その1)

・・・『 仏教の本質 』  
         哲学者 : 中村 元(なかむら はじめ)
            (You Tube)の談話・対談を採録

 ・中村 元 : 東京大学 インド哲学科、
   1912年(大正元年島根県生まれ、1998年86歳没、
   東洋思想の世界的権威、
   昭和52年文化勲章受章
   (仏教研究の業績と比較思想という学問分野を確立し、
   膨大な著作を世に送り出し、
    晩年、世界平和に対する発言。
    原始仏典を現代語に訳し、研究領域は西洋哲学、キリ
   スト教に及んだ・・とのナレーション)

 ・聞き手 : 臨床心理学者 河合隼雄

☆学ぶことの少ない人は、 牛の様に老いる。
        かれの肉は増えるが、 智恵は増えない。
                  (仏典:ダンマパダ)

☆「 相手に対する寛容の精神 」 というものが大事です。
  その点で仏教は、 
   「 無理に暴力・武力を用いて人に強いる 」  という
  事がありませんでした。
   昔は、 宗教が違うという事になると、「 必ず武力による
  闘争 」と 裏腹になっておりました。

   人類の歴史において、
  多くの宗教が現われたわけですけれど、
   「 武力に依らないで 説得だけによって 
            広まったのは仏教だけ 」 です。
   これは、西洋の宗教学者も 認めております。

   こういう考え方が、われわれの祖先の中でも 生きていたと
  思います。
   聖徳太子憲法なんかにも はっきり出ております。
   現在でも、これは 「 大切な心がけ 」 じゃないで
  しょうか。

☆インド全体が ヨーロッパ全体と ほぼ同じなんです。
   文明の歴史においても、 広さにおいても、 人口においても
  (『インドこころの旅、ブッダ最後の旅路をゆく。
               昭和61年放送よりの言葉)

☆(ナーランダ大学跡の映像で、 
 「 誰にも分かりやすく仏教を語る  中村さん 」 との
 ナレーションが )
  これがインドですよ。
  まるで石ころのように転がっている、
  どれひとつとっても 日本の国宝より古いんですからね。

☆人間の体は、
  王様の飾りたてた車のように、
  やがては朽ちてしまう。
  けれども、
  人から人に 伝えられる 「 真(まこと)の法(のり) 」は
  いつまでも輝く。

  人から人に 
  真理が伝えられる 訳でございましょう。
  それは 永遠の価値を持っている という意味なんでしょう。

  本当の自己というのは どういうものか。
  誰でも 人間は、どこかの場所で、いつかの時点で生まれて
 来た 訳です。
  そして、 
  必ず、両親があった訳ですね。
  それから、育ててくれる人があった、 
  助けてくれる人があった。
  その助けてくれた人の数というのは
  無数でございます。

  人間だけじゃなくて、山川草木まわりのものが、
  何か関係を持っている。
  遠く考えますと、
  宇宙の彼方から、例えば 太陽が 光線を送ってくる。
  そうすると、
  その太陽の恩恵も 受けているわけです。

  宇宙にある如何なるものも、 
  孤立したものでは無いという思想。
  宇宙とつながりがある訳です。
  その繋がり方が、 
  めいめい みんな 違う訳です。

  だから 
  個々の自己は、
  非常に微々たるものと 
  考えるかもしれません けれど、
  実は、

  その内には 偉大なものを秘めている 訳です。
  ですから、
  その偉大なものを 受けていることを 自覚すれば、 
  そこで
  自分の生きる道は どうかという事が、
  おのずから明らかになって 実現されるという事に なるん
 じゃないかと思うんですが。
                   (その2へ つづく)