「許される悪はあるのか?」について(改訂版)

題:  「許される悪はあるのか?」について(改訂版)
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 書評:慶応大学教授・○○○○氏、
 本「許される悪はあるのか?」マイケル・イグナティエフ
 書評文(抜書き):
 テロリズムからの安全を確保するためには、拘留、拷問、予防的
戦争が必要かもしれない。
 しかし、この考えを是認すれば「市民の自由が制限される」。
 市民的自由を絶対化すれば、テロリズムを未然に防げない。
 国民の生命を犠牲にするかもしれない。
 この本の著者は、中間の立場を選んだ。
 「道徳上の絶対主義にも、冷徹な現実主義にも加担しないように
努めた」という。
 それは、「より小さな悪のモラリティ」という考え方である。
 ーー(略)ーー
 現在では、テクノロジーの進歩と自由の拡大によって、「自由な
国民」の頭上には、大量破壊兵器を用いたテロ攻撃という「ハルマ
ゲドン」がもたらされる危険がある。
 それゆえ、「より小さな悪」を選択せねばならない。
 だがそうであっても、それがより大きな悪へと変化するのを阻止
せねばならない。ーー(略)−−
 日本では「道徳上の完璧主義」が好まれるあまり、「より小さな
悪」という思考が浸透しにくい。
 緊張感溢(あふ)れる現実世界で、我々が正しい道を見失わない
ための、偉大な知的貢献である。」 (読売新聞2012・4・29)
 (私見): 
 「日本が『道徳上の完璧主義』を好む」とは、見誤りの見方では
ないでしょうか。
 「好む」ではなく、「それが正しい」と判断しているからです。
 あなた様は「より大きな悪にならないように、小さな悪を行なわ
せる」とのお考えの様ですが、1例と致しまして、キリスト教の「
魔女事件」は、最初からこの様な悲惨な、非人道的な事件ではあり
ませんでした。
 あなた様は「小さな悪=拷問」は許されると言われますが、例え
ば、この人類の負の遺産の魔女事件のどのレベルの拷問まで許すと
お考えになられているのでしょうか?
 可哀想な女性が沢山おられますが、「鼻そぎ」ぐらいまでなら良
いなどとお考えなのでしょうか?
 命を奪われる女性が大勢いましたから、命を奪われるよりましだ
と・・などと、お考えになられて居られるのでしょうか?
 「小さければ良い」という「程度の問題ではない」と思います。
 例えば、「少人数だし」とか、「小さな拷問だから良いのだ」と
いうお考えなら「それは絵に描いた餅」「机上の空論」ではないの
でしょうか。
 「だから、大きくならないように監視するのだ」と言われますが、
今の魔女事件のどの時点で貴方様ならストップをかけられることが
できるとお考えなのでしょうか?
 このキリスト教が主導した魔女事件の問題も「最後は、ヨーロッ
パ中が空転する大惨事のレベルまで達し」、それが絵空ごとでない
こと、現実の地獄の世界が、この世に現出しました。
 何故、
 このキリスト教の方たちは止められなかったのでしょうか?
 貴方様は、「できる」とそれこそ増上慢になって居られるのでは
ないでしょうか。
 また、別の例で・・・またまた、急に、貴方のお宅に、警察が踏
み込み、「予防的逮捕です」と身に覚えのない拘束を受けたとした
ら、どう思われますか? 
 素直に納得して従いますか? 予防的逮捕だと・・。
 かつての日本の暗い世情的になるでしょう。「官憲に怯(おび)
える社会です」。
 何もしていないという確固たる安心が存在しない世界なのです。
 予防的範囲で逮捕もありうるのかとの葛藤の中に存在する生活す
る不安定さを意識した生活になるのです。
 それが、戦争までの大きな場合もあり得るという論理は空恐ろし
くなります。
 「予防的戦争なんて恐ろしい行為を是認しないでください」。
 (「これからの戦死者を減らすために広島・長崎に原爆を落とし
ました」まで行きます。
  『予防という観点から』、現実に、悲惨なハルマゲドンが起こ
されたのです)
 この様なお考えを、是非、考え直していただきたいのです。
(追記):
 必要悪の話は、「ジェノサイド肯定論へ繋(つな)がっていく」。
 より優秀な人種の世界になるためには「劣等な人種を減らすこと
が必要なのだ」となる。
 キリスト教にあるこの様な恐ろしい考え方、過去にあったこの様
な悪行を二度と起こしてはならない。
 (参考)モラル【moral】 道徳。倫理。「―に欠ける」
 (参考)せ‐じょう【世情】 1 世の中のありさま。せいじょう。
      2 世間の人情。俗人の心。せいじょう。
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::『愚かな人間は、考え一つで次の様な事をします』
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 記録CD:「ヒロシマ ナガサキ 私たちは忘れない」
               (被爆者の声を記録する会編)
☆ 妻と被爆した当時、33歳の男性の声
 もう焼けただれた、オバケの様な避難者の群れで、その公園が
一杯なんですよね。
 この大きな桜の幹のそばに、まだ年若い母親が、乳のみ子を抱い
て、お乳を飲ましている。
 ところがその母親は、年若い母親は、もう既に死んでいるんです
がね、この乳飲み児は、母の死もしらないで、無心に死んだ母の
乳房をしゃぶっている。
 しばらく、二人で待っていたところがですね、私の前に一人の男
が立ちはだかったんですね。
 私、キヨシ、と申しますが「おい、キヨシじゃないか?」と、私
の名前を呼んでくれたものですから、初めて父親だってわかったん
です。
 一目でわからないんですよね。
 父親、もう素っ裸で、それこそ頭のテッペンから足まで全部焼い
てしまってるんですよ。
 顔はですね、もうはれあがってますしね、まるで目が糸を引いた
様なんです。
 唇はブタのくちびるの様に腫れあがってるし、睾丸は膨れあがっ
てる。
 ところが父親は、そんな自分の身体に気が付かないで、私共夫婦
が焼けただれた身体を見て、心配してくれたんです。
 「お前はヒドイ事になってるやないか!」という事で、兎に角、
お前等に会えてワシは安心した・・・。
(ほんの少し前まで、おだやかな市民生活を送っていた人々が、奈
落の底に突き落とされる事になった)。
☆ 当時29歳の男性の声
 もー、死んだ人の転げとる、転げとる。
 その人はもういっぱい・・・這いよってですな。
 ところが、「助けてくれ」「助けてくれ」言うばってん、こっち
も自分のことがアレやし。
 そりゃ一人や二人こうしたっちゃ(助けても)どっちつかんと。
 その間を、こう堰切ってですね。
 その間にそのー。水槽があったでしょう。
 それに飛び込んどるんですね。
 もう、それ、かぁーって手曲げて、頭上げ、黒こげで、こう浮い
とるです。
 それがもう、水槽、あらゆる水槽にですね、それこそ五人、七人、
十人ちゅうように飛び込んじゃもう、黒こげになったままで死んど
る。
 それこそ形相なもんですなぁ。
 その姿たるや、もう虚空をつかんでですね。
 とにかくもう話しにならん。
 川下、川上、それこそああた、川の淵に寝とる人、それがもう「
助けて」「助けて」て言うばってん、赤剥けになった、芋虫のごと
ごげんしょるばってん。
 それを助けるような、とにかく一人や二人どうこうしたってしょ
うがないんだから、一杯だから。
・・(この様な耳を塞ぎたくなるような回想が延々と続く)・・・
           (本「人類は宗教の勝てるか」232頁より)